河童のおたから 秋田県仙北郡 昔、じさとばんばがありました。ある日、じさが山に出かけると、河童がまるくなって寝ていました。 「あんまり寒くて、すかたねから寝てるだ。じさ、火っこもってきて焚いてけれ。宝ものをけら」 そこで、じさは、家から火種を持ってきて、焚き火をして暖めてやりました。 それから三日、毎日焚き火をしてやると、河童は、 「じさ、じさ、これける」 小さな袋をくれました。聴くと、この袋に入ると、どこでも好きなところに行けるのだそうです。さっそく、入ってみました。 「大阪さ、行ぎでやあ」 すっかり楽しんだじさは、袋をねどこの隅に隠しました。ところが、ばんばが、作った南蛮味噌の入れ物が無かったので、この袋を見つけて味噌を入れてしまいました。それを知ったじさは、あわてて洗ったのですが、もう、袋には、不思議な力は無くなってしまっていました。 いいものがあるときは、隠さないで、みんなにしゃべらないと、なんにもならなくなってしまうこと。トピン・パラリ・ノ・プ。 (未来社版『日本の民話』より。角川書店版『日本の民話』にも収録) 解説:正確には、伝承ではなく、定型フォームを持つ昔話です。しつけのための教訓ばなしになっています。話の終わりが、遠野の「ドント・ハレ」とは違うのも面白いです。 |