東京都
工事を手伝った河童               東京都浅草

 文化年間(1804〜17年)、合羽橋近くに屋敷のあった伊予新谷藩の侍や足軽が、内職に作った雨合羽を、元締めとして集め、売って財をなした合羽屋喜八(川太郎)は、水はけの悪さに困窮する付近の住民を見かね、奉行所から許可をもらい、私財を投じて掘割工事を始めた。

 ところが、専門的な土木工事を差配する頭もおらず、ほとんど素人の工事だったこともあり、なかなか進まない。困り果てていると、隅田川に住む河童たちが、見かねて協力を申し出て、無事に工事を完成することができた。そこで、合羽橋の名称を、かっぱ橋に改め、地域のシンボルが河童になった。

解説:合羽と河童の語呂合わせ。男気の合羽屋川太郎。いかにも、粋人ヒーロー、助六が住んだ、江戸下町の華町、浅草に住む江戸っ子が、好きそうなテーマが並ぶ伝承ですね。
かっぱのいたずら                 東京都葛飾区

 ちょうど場所としては虎ノ門の辺なんですよ。わたしのおじいさんが、まだ小僧時代で、ほいで、夜使いに出されるんですね。歩いていたら、大入道が出てきたって言うんですよね。「おい小僧、相撲とろう」って、こういうんですって。そいで、かかってくるんですって。ほいでね。むしゃぶりついたら、他愛なく落ちちゃうんですって、川ん中へ。大入道だからたいへんだと思っていたのが。それでね、帰ってきて話したら、「かっぱのいたずら」っていわれたんですけどね。
   (ぎょうせい社版『日本の民話』より)

解説:虎の門に向かう坂と、坂下の堀割り。河童だけではなく、なにか魔物が、通行人に声をかける。そんな、都市伝説とも言える江戸伝承が多数残されています。これはその河童バージョンです。