長野県
ぼた餅と河童小僧                長野県北佐久郡

 むかし北佐久のある村で、一人の乞食が、明神さまの縁の下で寝ていると、お堂の中で、神様達が話をしている声を聞きました。名主様の家で子供が生まれるので、見に行くと言っているのです。
 しばらくすると、神様達は帰ってきて、「子供の寿命は、七つまで。十一月十一日に川流れで死ぬ」と言い合っていました。乞食は、名主様に、この話をしようかと迷いましたが、名主様の家では、やっと跡取りができたとおおよろこび、とても、不吉な話などできませんでした。
 それから7年。乞食は、すっかり忘れていたのですが、ある日、明神さまの前を通りかかり、思いだしました。「あれ、今日は十一月十一日だ」。あわてて、名主様の家に行き、神様の話をしました。名主さまは驚き、川に釣りに行った息子を、おお慌てで探しに行こうとすると、息子が帰ってきました。息子によると、川で見知らぬ小僧にであい、すもうをしようと言われたが、腹がすいていたので、持っていたぼた餅を食べてからにしようと言い、小僧にも分けてあげたところ、小僧は、「おらは河童だ。おまえを川に引き込もうと思っていたんだが、ぼた餅をいっぱい食わせてもらったから、お前は引き込まない」と言って、川へ沈んでしまったとのことです。
 それから、村の人は、川流れに合わないように、十一月十一日にあずきのぼた餅を食べるようになったとのことです。
   (未来社版『日本の民話』より)

解説:これに似た話で、ぼた餅が飴玉に変わっている民話が、群馬県の東部地域にも伝わっています。