富山県
大工さと河童                   富山県射水水郡

 むかし、むかし。ある大工さが晩おそく旅から帰ってきましたとぉ。ある川のたもとで大きな化けものに出会いました。大工さは、こいつは河童にちがいないと思いましたので、もっていたげんのうを出して、河童の頭の鉢をめがけて、「ええい、こんちくしょう」とたたきつけました。しかし、たたいても、くゎんと音ばかりしています。おまけに、たたくほど、化けものは大きくなってきます。
 恐ろしくなって、大工さは逃げたのですが、どんなに走っても、河童は行く手に立ちふさがっています。
 大工さは、家に着くと、すぐに寝床に入り横になりましたが、とうとう死んでしまいましたとぉ。
   (未来社版『日本の民話』より)

解説:河童が、何か、悪さをしたのではないのですが、人間側が一方的に危害を加えています。そして、化け物に出会った人が、最後には、寝込んで死んでしまう。遠野物語に収録されている多くの妖怪譚にも見られる、共通した出会いと結末です。遠く離れた東北と越中、この共通性には、興味がわきます。