大阪府
ガタローの薬                    大阪府摂津地方

 むかし、ひとりの百姓がありました。馬をつれてかわらへいき、馬を洗っておりました。とつぜん、馬はひひひんと、声高くなきました。おどろいてみましたが、なにもありません。そのまま、厩につれて帰りました。
 夜中になって、また、馬が激しくなくので、駆けつけてみると、闇夜に二つの目がキラキラ光っていました。ガタローの目玉にちがいないと、百姓は度胸をすえ、「こら、ガタロー。何しにきた」大声で怒鳴ると、「はい、昼間、馬の尻を抜こうと思ったんやが、しくじったんだす。こんどこそと、抜きにきたんやが、また見つけられてしもうた。わしは、水の中では天下無敵だが、陸に上がったらあかんのだす。ゆるしとくなはれ。そのかわり、傷薬のつくり方をおしえてあげます。ガマの油というやつだす」
 百姓は、ガマの油のとりかたを教えてもらい、許してやりました。
   (未来社版『日本の民話』より)

解説:『河童駒引』と『河童の薬』の合体版ですが、商品名の『ガマの油』まで飛び出す。なんとなく、商売人の町、大阪らしい民話です。