島根県
西川津のカワコ                  島根県出雲地方

 むかし、西川津の小川に、カワコが住んでいました。それが、時々陸へ上がっていたずらをするので、近くのお百姓さんたちはへいこうしていました。
 ある日、いつものように人の隙を見て上がったカワコは、草をむしったり木の枝を折ったりしていましたが、つないであった馬の手綱をひっぱりました。馬は驚いて跳ね上がり、カワコを跳ね飛ばしました。そのひようしに、頭の皿の水をこぼしてしまい、すっかり通力をなくしたカワコは、うろうろしているあいだに、お百姓さんたちにつかまえられてしまいました。
 つかまえられたカワコは、罰として、野良仕事をさせられました。通力がなくなっているカワコですから、尻コダマを抜く力はありませんが、くせで、人のお尻に手をだすことを止めません。しかたなくお百姓さんたちは、お尻に瓦をあてて畑にでるようになりました。
 いっぽう、川に帰してくれと、カワコはせがみます。そこで、いたずらはしないとの証文を書かせて助けてやることにしました。帰るときにカワコは、「これからは、もし、川で溺れそうになったら『雲州西川津』といってごしなはえ。私がおぼれさせません」と言い残しました。そのときの証文は、今でも、薬師堂にあるそうです。
   (未来社版『日本の民話』より)

解説:河童を罰として使役する。尻こだまを抜かれない様にと、尻に瓦を当て、河童と一緒に野良仕事をする農民。どことなく、ほほえましい風景を感じる民話です。