愛知県
馬にとりついたかっぱ             愛知県北設楽郡

 中設楽に馬垂(うまた)れという家ながあるがね。その家の前に、馬垂れ淵という淵がある。そこにむかし、田んぼを馬にすかしたり、しろかいさせたりして、馬を川へ洗いに行ったという。そして、家へ、その馬をひいてきて、うまやへ入れたが、馬が、はねてはねてしょうがないというわけだ。馬が、きちがいになってしまったという。そんなばかなと、行ってみたら、すりばちかぶったような、小さな小僧が、うまやのすまに、はりついているというわけだ。
「まあ、こりゃ、かっぱだぞ。まあ、どうかせにゃ、せんない」と、棒切れをかついだりして、はり殺そうと、うまやのすまに追って。「設楽のものを、川でとらなんだら、許してやる」といったら、承知したようなふりをしたっていうだね。ま、むかしのことだから、わからんが、はなしてやったと。
   (ぎょうせい社版『日本の民話』より)

解説:『河童駒引き』の亜流です。河童は言葉を発していません。殺そうとしたのに、逃がしたり、わからないと言いながら、放したとして終わる。老人からの伝聞のようですので、いくらか話が乱れています。