カッパ茶屋 山形県庄内地方 昔、鶴岡の金峯山のふもとに流れる青龍寺川の脇さ茶屋があった。こごのじいさん、天王様(八坂神社)さ初きゅうりを納めるため、川の近くの畑さ、いつもきゅうりを植えていた。 ある年の夏、きゅうりをもぎに畑にゆくと、大きなきゅうりはみんななくなっていた。2、3日後、まだ行って見ただば、やっぱりなくなっていた。だれかが盗んでいると思ったじいさんは、畑のそばに隠れて見張ることにした。しばらくすると、畑の方で音がする、 「ドロボー」 さけんで音のする所に行ってみると、そこにはカッパがいた。カッパは、ペコペコ頭をさげながら、 「どうか許してくれ。おれはきゅうりが大嫌いで、においだけでも死にそうになる。たのむからきゅうりを作るのはやめてくれ。そのかわり、子供を川でおぼらせることはしねえようにするから」 と頼むので、じいさんは、 「よしわかった。きゅうりは植えねえ。子供の命は守ってくれよ」 と言ってゆるしてやった。 それから、この川では子供の川ながれはなくなり、茶店も繁盛したのだそうだ。トンピンカラリネッケド。 (山形新聞社:山形の民話) 解説:カッパが胡瓜を好むとの話が主流ですが、この民話は逆で、大嫌いというのが面白い。きゅうりを川に流す八坂神社の神事も、河童とからめた伝承になっている所がほとんど。しかし、この話では、河童とは無関係な神事としていて、興味深い伝承です。 |
河童の証文 山形県最上地方 昔、塩根川のそばに、太郎兵衛という人がいた。塩根川は、暴れ川で、ときどき大水がでて、家や畑が流されて困っていた。 ある日。太郎兵衛が、馬を曳いて河端を歩いていると、馬が急に「ヒヒン」と鳴いて立ち上がった。太郎兵衛が馬を見ると、尻尾のところに猿みたいなものがくっついていた。それは、河童というもので、塩根川の深いところにすんでいる動物だ。河童は、馬が大好きで、馬を見つけると、川からでてきてくっつくのだ。 太郎兵衛は、 「こん畜生。河童のくせして馬にくっつくなんて、とんでもねえ野郎だ。煮て食ってしまう」 と言った。河童はおどろいて、 「かんべんしてくんろ。助けてけろ」 と言って、巻物をだしてきた。 巻物には、『塩根川が大水でも、お前の家と畑は決して流さない』と書いてあった。 それで、太郎兵衛の家と畑が、今も昔のままあるのは、この書付のおかげなのだそうだ。とんぴすかんこなえけど。 (山形新聞社:山形の民話) 解説:河童駒引きに似てはいるものの、馬を引きずるのではなく、ただ単に、大好きでくっついているという形容は、なんともかわいらしい民話です。 |