妖怪学入門
第四章 日本の妖怪史
 『妖怪』という言葉は、明治時代になってから命名されたもので、それ以前は、全国的に統一された名称は存在せず、各種の名称が使われていました。そんな中で、代表的な名称は、『もののけ』でしょう。
 また、『もののけ』も、時代によって、認識のされ方が異なっています。それらを、ざっと振り返ってみましょう。
@古代(〜平安時代)
 自然の驚異に発し、当時の人の理解を超えたものを、『もののけ』と認識した
 ・自然現象=地震や台風や雷なども、『もののけ』のしわざ
 ・常人には理解でき無い様な行動をする人=人の『もののけ』、鬼や生霊など
A中世(鎌倉時代〜江戸初期)
 万物の長じたものから発するもの=器物も、100年が経つと『もののけ』になる。『百鬼夜行絵巻』 
B近世(江戸中期〜幕末)
 印刷技術の発達=妖怪の図形化・娯楽化。妖怪のプロマイド化(鳥山石燕の画図百鬼夜行図の流行)
 幽霊認識が始まる=妖怪は、主に物が変化した化け物だが、霊魂が、恨みによって『もののけ』に変化したのが、幽霊
C近代(明治〜戦前)
 妖怪撲滅運動の推進=西欧からの文化や近代技術の流入により、妖怪などを信じることは、古臭い因習であって、文明開化にふさわしくない悪しき迷信であるとされた、『もののけ』迫害の時代
D現代(戦後〜)
 妖怪の再評価=かっぱ天国(清水昆)やゲゲゲの鬼太郎(水木しげる)。いやしの文化としての『もののけ』であり、キャラクターとしての妖怪
 妖怪学の復権=『もののけ』妖怪を、日本文化として捉え、学問対象にしようとの機運が、アカデミックの世界でも盛り上がりつつある

 近年、社会的には『いやし』の対象として映画などにも取り上げられ、学問的には、日本人の心的な風俗(民俗)の象徴として、妖怪や河童が扱われるようになっています。嬉しいことです。

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